CLO 3Dとstyle3Dの比較

CLO 3D

今回はCLO3Dとstyle3Dがどのように違うのか比較した内容を書いた記事です。

style3Dは現時点では個人プランがないので体験版を使用した感想です。CLOもstyle3Dも今後のアップデートなどによって使用感や機能などは変わってくると思います。

UIの違い

最初に画面の構成・配置はどうなっているのか比べてみます。

CLO3Dの画面↓

style3Dの画面↓

初期設定では、CLOは左が3D・右が2Dウインドウになっており、style3Dはその逆です。この配置は入れ替ることが可能ですので実質大きな違いはないという印象です。

また、プロパティエディターという詳細の数値設定する場所の構成も非常に似ています。

アイコンの位置や文字表記などは少し違いますが、どちらかのソフトを使っているならもう片方はすぐに慣れるのではないかと思います。

ショートカット

CLOとstyle3Dのショートカットと、マウス操作(拡大・縮小など)は大きな違いはありません。

下図はstyle3Dのショートカット一覧です。

CLOと比較した場合、よく使う機能で2つほど違うものがありますがほとんど同じです。
表示名が異なっている部分もありますがショートカットは表記されている文字で覚えるものではないので、使っているうちに自然と覚えると思います。

また、いずれのソフトもショートカット設定を変える機能がありますので好きなように変更可能です。
例えばCLOに慣れている人はstyle3DのショートカットをCLOに完全に合わせれば全く同じように使いこなせるはずです。

仮に両方のソフトを使うことになった場合は、ショートカットを変更して揃えておくと混乱なく操作できると思います。

シミュレーション速度

シミュレーション速度は、設計思想の違いが出てきています。

シミュレーションをかけたときstyle3Dの方が速く組み上がります。布と布の接合が素早く行われます。
結果を速く確認できるのはstyle3Dです。

一方で、CLOはシミュレーションに少し時間が掛かるものの、そのお陰で途中で止めて微調整することが出来ます。組み上げている途中に細かい調整をしやすいのはCLOです。

この違いは使う人のスタイルによって印象が変わってくると思います。シミュレーションをかけながら動きをつけたりシワを任意で入れたい場合にはCLOが良く、素早く綺麗な結果を求めたい場合にはstyle3Dの方が良いと感じるはずです。

2D画面でのパーツ配置はstyle3Dの方が速く動きます。CLOでは画面全体の頂点数が多くなった時、徐々に処理が重くなりますがstyle3Dは重くなりにくいです。この点は単純にstyle3Dの方が使い勝手が良いと言えます。

サムネイル

データを保存した時のサムネイル表示は違っています。

style3Dでデータを保存した場合、下図のように作っているデータがサムネイル表示されます。これはBrowzwearと同じです。

CLOは以前のVerでは保存したデータと別で作っている内容をPNGでサムネイル画像出力されていました。

Ver2024からCLOも他のアパレル3Dソフトと同じように作っているデータがサムネイル表示されるようになりました。サムネイル表示とは別にPNGも出力されます。

中身が表示され視認性が高くなる、データを間違えにくくなるという点は同じです。CLOは何故かPNG画像も出力されるので、その画像の用途は

価格

CLOの価格については、アパレル3Dソフトの比較をみてください。

style3Dは現時点(2024/4月)では価格について正式に発表されていません。
公式のFAQでは以下のやりとりがあります。
Q1: Is there a paid version of Style3D Studio?
A1: Yes, currently we offer 3-month free trials, but the purchase portal will be launched in the future.

有料版について今後購入サイトが立ちあがる、との回答です。初期は3カ月間のフリートライアルが設けられていましたが、現在は1カ月の体験版に変わっています。2024年8月くらいには価格などの詳細が出てくるかもしれません。

規約

style3Dの規約はまだ確認できていません。有料版が出たときに詳細が出てくるはずです。

気になるのは、style3Dの関連ソフトである、Style3D Simulatorの個人ライセンスに書かれている注意書きです。

個人ライセンスは商用利用できない、と書かれています。関連ソフトがこのような形で書かれているという事は、style3Dも同様に個人ライセンスの商用利用できない可能性があります。

商用利用できない場合、勉強のためか趣味で使うかということになります。フリーランスが使えないという条件ではソフトウェアのシェアを高く維持するのは難しいのではないかと思います。

Unreal Engineとの互換性

CLOはLiveSyncという機能を開発しており、CLO/MDのデータをUEに持ち出しやすくしています。特にアニメーションデータを移行する場合は、安定してデータを持ち込みやすくなったと言えます。UEに限らずVRChatなどともデータ連携しやすくなるように開発されているようです。まだベータ版であり正規リリースされたときには有料のツールになるかもしれません。

style3Dは、style3DSimulatorというUE用のプラグインを提供しています。UE上で布シミュレーションを実行できるようです。

このプラグインをは有料で提供されています。個人契約の場合、商用利用は不可になっています。企業契約金額は、他のDCCツール1台分に近い料金なので、それ以上の価値があると判断されるのかどうか次第でどれだけ普及するか変わってきそうです。

CLOとstyle3Dでは、UE用の開発しているプラグインの目的が大きく違うように感じます。今後使用例なども出てくると思いますので、そういった会社の話を聞いてみて判断する方が良さそうです。

その他 細かい違い

以下、小さなことを幾つかあげていきます。結論から言ってしまうと、これらのことは僅かな差でしかなくどちらのソフトを選ぶべきか、というレベルの内容ではありません。

物性に対するアルゴリズムも3DCADソフトごとに特色があり異なっています。しかし服の3Dデータを作るうえで数ミリ単位で誤差があるのかどうか、というのはあまり問題になりません。もし完全な物性表現をしたいのであれば、縫い目が袋縫いなのかロック+地縫いなのか等でも変わります。ですが、そこまで作りこむにはコストやデータ容量などの観点で現実的ではありません。

表情

style3Dではアバターの表情を選択できます。

CLOにはアバターの表情を変える機能はありません。ただ、AIで顔を生成する機能があるのでそれを使い顔や表情を付けることは可能です。

元から入っているアバターに関しては、表情や髪型をふくめ余り気にしなくても良い部分であるといえます。なぜなら、アバターをそのまま使うときは服のみに注目・確認した場合がほとんどですし、動画などで使う場合はアバターをそのまま表示させることが少ないためです。

アニメーション

style3Dではアニメーションファイルにカーソルを置いていると、動きを確認できます。

CLOはアニメーションを適用させて、アニメーションタブで確認しないと動きは分かりません。

style3Dの方が親切な設計だと思いますが、アニメーションのデータ名称を整理してあれば気にしなくても良い点です。

アバターのサイズ調整

style3Dではアバターサイズをスライダーを使って調整できます。ゲームでのキャラメイクに近い印象です。

メッシュを4角にしたときの違い

以前のVerではメッシュ形状を4角にしたとき、style3Dの方が整列されていました。Ver2024からCLOでも4角メッシュにしたときに並びが綺麗になるように変更されています。大きな違いはなくなりました。

style3Dの場合↓

style3D atelier という関連ソフトでは4角メッシュの最適化などを進めているようです。
新たに追加された「短形」で変換した場合は、下記のとおりです。
今後も最適化が進めば、リトポロジーは機能でほぼ終わるという時代もくるかもしれません。

CLOの過去Ver↓

CLO Ver2024↓  以前とくらべるとメッシュ形状が整列されるようになりました。

3角メッシュで比べると大きな違いは無いですが、4角メッシュへのアプローチは2つのソフトで方向性が変わってきたかもしれません。

アイコンや文字の視認性

style3Dは外枠のマージン(余白)が狭いため、少し窮屈な見た目に感じます。モニター次第では少し見えづらいところが出てくるかもしれません。

日本語化したときに不自然な翻訳になっているところなどもあります。

ただ、慣れれば文字を追って作業することはありませんし、翻訳なども徐々に直してくると思うので気にするほどの違いではないと思います。

結論

CLOとstyle3Dは非常に似ており、どちらかを使いこなせれば逆のソフトも使うことが出来る、と言えます。

style3Dの規約で個人ライセンスが商用利用不可、ということが確定したら全体のシェアとしてはCLOの方が高くなるでしょう。高いシェア率のソフトを使っていた方が仕事は多い傾向にありますので、その場合はCLOに慣れておく方が良いと思います。

企業で導入する場合は、他ソフトとの連動や利用料金など総合的な面で判断することになりそうです。