「CLO3Dやstyle3Dなどのアパレル3DCADソフトをつかってみたいけど型紙作成はどんな方法があるか分からない」という人向けの記事です。
服の型紙というものについてほとんど分からない人を対象にしています。専門的かつ高度な内容は入っていません。アパレル関連の人や、パタンナーを目指している方は別の記事を読んでみてください。
スカルプトなどで服の3Dモデリングする方法とは違い、CLO3Dやstyle3Dなどアパレル3DCADソフトは服の型紙をつなぎ合わせてモデリングしていきます。こういったソフトに興味があり型紙作成を勉強してみたいのであれば、どのような作成方法があるのか知っておくことは重要だと思います。
それぞれのメリットデメリットも書いていきますので、自分に合いそうなものを勉強してみてください。
型紙とは
服の型紙とは、服の各パーツを平面の形にしたモノです。
型紙に合わせて布を裁断して縫い合わせることで製品としての服になります。下図はパーカーの型紙の一部です。
これらのパーツを繋ぎ合わせることで立体的な形になります。
ある程度経験をつめば、平面パーツを見ればどういったものが出来上がるのか予想できるようになります。逆に立体形状から型紙を予想できるようにもなります。
注意点
リアルな服を作るための型紙と、3Dモデリング用の型紙は完全に一緒ではありません。3Dモデルを表示させる要件に適する形に変更したほうが綺麗に見えたり動きが安定したりします。
物理的な服をつくりたい場合、工業化という工程が必要ですがアパレル3DCADソフトには不要なので今回の記事では省きます。3Dデータ用の型紙だけでは実際の服は作れない、ということだけ頭に入れておいてください。
型紙の作成方法
囲み製図
四角形などの単純な図形をつかいながら指定されている寸法にそって線を引いていくことで製図を完成させていく方法です。平面上で指定される座標をつないでいくイメージです。
服を着る人のバスト寸法や肩幅を計測して、その数値から線の長さや点の位置を算出していく方法もあります。メンズの伝統的なアイテムではこの手法がとられることがあります。
メリット
- 本やネット上で情報が配布されており始めやすい
- 伝統的なアイテムの場合、採寸さえできれば再現性が高い
- 基本的な型紙形状を理解しやすい
デメリット
- 体型に合わせた調整には別の知識が必要
- デザインのバリエーションが少ない
- ゼロから自作しているとは言えず型紙の知識はあまり身に付かない
学習方法
囲み製図について書かれている本や、ネット上で配布されている情報から始めればOKです。学習するというようなことは少ないので、線を引いて作る型紙の数を増やしていくことをまずは目標にすると良いと思います。
原型から展開する
ボディ(マネキン)に沿うようにダーツが入っているものを原型と呼びます。
それぞれのボディに合わせるので、形は幾つかあります。原型にたいする考え方も分かれており、○○式と言われていたりします。
下図は、CLOのとあるアバターに合わせて簡易的に作った、ウエストから上の原型です。
この原型をそのまま縫い合わせると体にある程度フィットした形になります。今回は説明用として適当な形を作りましたが、完全にアバターにフィットする形の原型を作ってみるのも練習になると思います。
原型をもとに、ゆとりや運動量を入れる部分を作ったり、切り替えを入れたり、ダーツの位置を変えたりして服の形を作っていくという方法です。
メリット
- それぞれの体型に合った服を作りやすい
- 汎用性が高い作図方法だといえる
- 基礎的な製図知識が身につきリアルな服作りにも活かせる
デメリット
- 展開方法などの知識を学習する必要がある
- 構造理解に時間と手間がかかる
- アパレル3DCADソフトでは操作しづらい展開方法がある
学習方法
まずは原型をつくるところから始めてみると良いと思います。原型の作り方はYouTubeに動画が出ているのでそれらを参考にして作ってみてください。
原型を作ったら、次はダーツの位置を変えてみたり切込みを入れてみたり自由に動かしてみます。3D上でどう変化したのか観察してみると、原型をどう変えれば服の形やゆとりが希望通りのものになるのか分かってくると思います。そのうえで、型紙作成の本や講座を受けてみると理解度が深まると思います。
とはいえ、独学ではかなり難しいと思います。より精度が高いものを作っていきたいのであれば誰かに直接教えてもらうことを検討してみてください。
ドレーピング
立体裁断とも呼ばれます。布を対象のものに止めつけたり垂らしたりしながら、形を作っていく方法です。不規則なものや立体構造が複雑なもの、平面上の算出では設計がむずかしいものを作成できます。
アパレル3DCADソフトでドレーピングする場合、ピン止めしながら自由に布を縫い付けたりしてイメージにあうかどうかを試しながら作り上げます。布を使ったスカルプトに近いイメージです。
メリット:
- 立体的なシルエットを作りやすい
- 平面上の算出では設計がむずかしいものに有効
- 直感的な操作でデザインを作っていける
デメリット:
- 経験と技術がないといびつな形になってしまうパーツが増える
- 感覚による部分が大きいため再現性は低い
- 複雑にパーツを組み合わせた場合、2Dと3Dの対応パーツが分かりにくくなる
学習方法
最初は自由に布パーツを止めつけたり、縫い合わせながら何か形を作ってみると良いと思います。
アパレル3DCADソフトの操作を知らないと思うように動かせないので、並行して操作方法やとめつけ方のコツを学習すると効率が上がります。
より高度なものを作りたい場合は、ドレーピング、立体裁断、などで基礎の書籍や応用書籍、動画などを検索すれば教材はいくつか出てきます。
予算に余裕があれば、アパレル3DCADソフトの操作方法とドレーピング両方が分かる人に教えてもらうと時間を節約できます。
実際の服をもとに型紙をつくる
実際の服を用意して、それと全く同じものを作る方法です。
服を分解してパーツに分けて形をトレースしたり、分解しない場合は服の上に紙や布を乗せるなどして型紙をつくっていきます。メジャーなど採寸するための道具と、服を広げておけるだけのスペースが必要です。
メリット:
- 分解する場合、縫い合わせ方法や裏側がどうなっているかなど勉強になることが多い
- 自分が好きなデザインの服の型紙を作ることができる
- 色々な箇所を計測することになるため、服の寸法感覚が身に付く
デメリット:
- 凹凸のある部分や特殊処理している場合、形状を正確に取ることが難しい
- トレースしたものを型紙として整理する必要があり手間と時間がかかる
- 服を分解する場合、元に戻すのは大変
学習方法
服を分解するのであれば、何枚か服を用意しておくと良いと思います。いくつかのアイテムを調べてみると徐々に構造の理解が深まるはずです。
慣れるまではパーツが多かったり構造が複雑なものはさけたほうが無難です。
最初に服の写真を撮影しておき、型紙を取ったあとで比較してみる方法も有効だと思います。
まとめ
とりあえず気軽にはじめてみたい場合は、囲み製図から試してみるのがおすすめです。
服の裏側の構造も一緒に見てみたい場合は、実際の服をもとに型紙作成を試してみると良いでしょう。
型紙をしっかりと勉強するつもりであれば、原型から展開とドレーピングを同時に試しながら学習していくと良いと思います。原型展開とドレーピングができればすべてのデザイン形状に対応できます。
どの方法を選択してもすぐに型紙作成方法や服の構造を理解できるようにはなりません。時間はかかるものだと思ってチャレンジしてください。
この記事では「型紙を自分でつくる」という前提で書いてきましたが、やってみて無理だと感じたら自分で作る以外の方法を検討してみてください。型紙は外注しても良いしベースになるデータを購入してアレンジするのも手です。