CGクリエイターが「パターン/縫製仕様」のスキルを効率よく学習する方法

CLO 3D

アパレル側の人間目線で、アパレルの製造にくわしくない人にパターン/縫製仕様を伝える・勉強してもらうのであればどういった点に注目・注意したほうが良いのかという事を記事にしています。

ゴール設定によってどの順番で学べば良いのか、何を参考に学ぶのかは変わってくると思います。なので条件を絞っておきます。

今回は【アパレル専門外の人がリアルな服を3DCADで作成したい場合】という前提で意見を出せればと思います。物理的な服を実際に作るのではなく3Dに絞ってリアルな服データ作成を学ぶ方法は何がオススメかという話です。

ゲームなど動かすものを作りたい場合は必要条件が変わると思いますしリアルな服表現が良いとは限りません。ただ、リアルな服表現を知っていて敢えて崩してつくるのか、知らずにつくるのではクオリティに差が出ることもあると思います。

まず、学習するならどのような方法があるか、考えられる例と内容をあげてみます。

  • 参考写真を集めて形状をトレースする
  • 動画学習する
  • 人体と服の構造に関する本を読む
  • 自分で服を実際に作ってみる
  • ワークショップに参加する
  • 服を分解してみる
  • オンラインコミュニティに参加する
  • 人から直接指導を受ける

やめておいた方がいい

まず、この中でオススメしないものがあります。

参考写真を集める、です。いわゆるリファレンス集めは長期的に見れば効率的ではありません。なぜなら構造が分からないままでは、何故その形になっているのか分からないからです。
依頼者からの指定があり完全にマネしたい場合以外で使うことは厳しいと思います。

具体例を見てみましょう。まずは下図のスカートです。ファスナー止まり位置にシワが入っています。

このシワは、ファスナーを付ける時に伸ばしながら付けてしまいファスナー止まり(終わる)位置で布が余ったためにシワが入っている状態です。つまり縫製不良です。

敢えて縫製が良くない物を表現したい、という事であればこの場所にシワをいれる意味はあります。ただ、このシワや吊れている状態を構造や縫製が分からない人が判断することは難しいと思います。

次に涙あきと言われる仕様を見てみます。下図のような着用データを集めてきた場合もスリット部分を楕円に歪ませて作るかどうかは慎重に考える必要があります。

まず、中心の切込みが入っている部分は直線です。型紙は下図のような形になっています。

背中側の分量や足りない時や、腕を前に抱え込むようにしたときなどに引っ張られると最初の図のようにスリット(切込み)位置が歪んでしまいます。なので、寸法設計がうまくいっていて身体の動きがないときに、歪んでいるとおかしい場所ということです。

簡単な例でしたが、もっと構造的に複雑なものも多いので、参考資料を集めてもどう扱うべきか(何が綺麗な形なのか)分からなければ誤った知識が付いてしまう可能性もあります。

独学で進めるなら

次に、動画学習・関連する本を読む・自分で服を作るなどは独学で進めやすいため手軽にはじめやすいといえます。教材で体系的にまとめられているものがあれば良いですが、そういったものには中々巡り合えないのではないかと思います。

教材を決めたのなら1つのものを集中的に学習する方がいいと思います。教材によっては服に対するアプローチは全く逆という事もあるためです。ある程度分かってからでないと言っていることの違いが分からない、判断できないという状況になってしまいます。

始めやすい代わりに挫折もしやすい方法です。服を実際に作ってみるのはオススメですが敷居は高くなってしまいます。ミシンや糸などの道具も必要ですし、ミシンの使い方も覚える必要があるからです。Wi-Fi環境もPCも持っていないひとがプログラミングを始めてアプリを実装するくらい挫折率は高いのではないかと思います。

参加・実行型

ワークショップに参加したり、服を分解してみる・オンラインコミュニティに参加する、というのも非常に勉強になると思います。ただし基礎知識がなければ話や内容についていけないということになりかねません。今回の前提であるアパレル専門外の人には難しい選択肢だといえます。

独学である程度基礎を学習できた後なら試してみる価値はあると思います。

人から直接指導を受ける

1~3年の学習期間とお金をかけられるなら専門学校などに入ることを考えても良いと思います。設備がしっかりしているところも多いですし集中して専門的な内容を学習できます。

社会人向けに教えているところもあります。そういう所を探す場合は、初心者向けの内容を扱っているか確認したほうが良いでしょう。経験者のみターゲットにしているところが多いからです。

家庭教師のような形で技術的なメンターを付けるという方法もあります。学習進行スピードや柔軟性という意味ではメンター契約してみてもらうと効果が高いと思います。気になったときだけデータの添削を依頼する、という手も有効です。

この方法が、コストや時間を考えると最も効率的です。

共通でいえること

学習方法はその時の状況次第で良いモノが変わりますが、何を学習すべきかということはハッキリ言えます。

【どう型紙を修正すれば希望の形になるのかを学習する

何かの服をつくるための基本的な型紙データや、3Dデータは無料で配布されています。ゼロから作るチカラよりも補正していく能力を鍛えた方が汎用性は高いと言い切れます。CLO公式のマーケットプレイスでも、公式が服のデータを無料配布しています。これらの服をベースに付け足したり、組み合わせることで殆どすべてのデザインの服を作ることが可能です。

服の表現には正解がなく、ゼロから学習すると時間がかかりすぎてしまいます。

型紙の知識が中途半端にあるとかえって迷ってしまう場合もあります。例えば、アバターをTポーズにして服を作っていく(そのままウエイト付けなどをする)場合、袖山はかなり低くしておく必要があります。こういった内容にも柔軟に対応できるのは修正や補正する知識です。

まとめると【服の構造と修正・補正方法が分かる人に2D/3Dを教えてもらう】という方法がもっとも効率的でオススメです。予算次第だと思いますが仕事や受注に活かせるなら、早めに身につけた方が結果的にお得です。

こういった内容を展開しているサービスや会社もありますし、SNSなどで探してみても良いでしょう。