アパレル企業でどの職種が3DCADを使うのが良いのか?という悩みをかかえている企業は多いのではないかと思います。実際に検証してみたり仮で配置してみたものの、うまくいかなかった・機能しなかったという事例もあります。
アパレルに数多くある職種でどの職種に担当してもらうのが良いのかを考えてもらうため、独断と偏見で、職種ごとのメリットと課題を書いてみようと思います。
企画職(デザイナー・MD)
メリット
企画段階で3Dデータを使い、デザインやアイテム検証などに活用できれば費用対効果は高くなります。1発OKが出るサンプルを作成できるのであれば、サンプル回数やリードタイムを減らすよりも圧倒的に効率が良いためです。
企画職のなかにはデザインだけではなく、縫製仕様や生地知識も豊富な人もいます。3Dデータを作する際に外観的な精度の高さに期待できるという点もメリットの1つといえます。
デザインを考える際に、立体的な構造やバランスを確認しながら調整できる、という点も大きなメリットです。
課題
企画職でパターンや縫製知識まで網羅している人材は少なくその上3DCADまで扱えるとなると希少です。人材確保が難しいという点が課題です。
また、企画の内1人が使うことができてもチーム全体の効率は上がらないことがあるという点や、量産進行の決定権がある人物(MDなど)の理解が得られるかどうかも課題となります。
パタンナー
メリット
今回とりあげている職種のなかで、もっともアパレル3DCADの適性が高く習得も速い可能性があるといえます。2DCADとの連動が円滑に行えたり、型紙操作をした場合に服のどこに影響を与えるのか分かっているという点も優位性があるといえます。
縫製仕様や布ドレープに対する知識を持っているという点も3DCADを綺麗に組み上げる適性があるといえます。
リモート作業の場合でも3DCADは有効に機能しやすいため業務内容とのマッチングは良いと思います。
課題
2Dパターンの技術習得に一定期間かかる(個人差はあるが数年単位)ため、途中で3DCADの学習を入れると2Dも3Dも中途半端なスキルで止まる可能性があります。
2Dを一定のレベルまで習得せず3D作業に入った場合、サンプルが上がってからの修正などの業務には入れずに、担当できる業務範囲が狭くなってしまうという可能性があります。
またパタンナーが3DCADを使いこなせるようになっても待遇に大きな差がでない場合、習得しても仕事が増えて時間が圧迫されるだけになるので覚えたくないという声もあります。スキルが高く作業が速い人材は仕事がふえるだけではモチベーションが下がり生産性も低くなってしまう危険性があります。
縫製士
メリット
縫製仕様や、縫いあがったときの形のこだわりを3Dにも活かせるのが強みです。パターンが分かる方も多いので3DCADを扱う土台の知識が揃っているのもメリットといえます。
3DCADのパーツ配置順序や、縫い合わせ線への理解など実際に服を縫うこととリンクされる点が多く適性は高いといえます。
仕事で閑散期がある場合に、隙間を埋める業務として3D作業を請け負うことも選択肢に入ると思います。
課題
縫製や裁断をしている場所とPCの置き場は分ける必要があるのが課題です。温度やホコリやチリの問題のためです。
CAD室が分かれている会社の場合は、一緒に3DCAD用のPCを配置すると良いでしょう。
縫うという作業と3DCAD(とPC置き場)は物理的にも気持ち的にも距離があるので、シームレスに切り替えができず効率が悪くなることがあるというのは課題です。
テキスタイル・グラフィックデザイナー
メリット
デザインしたテキスタイルを立体的な服の状態で確認でき、そのデータを使ってプレゼンできるため行っている仕事との親和性が高いと思います。
グラフィックの場合も同様で、位置や色を立体的なデータで確認できるのはメリットです。
課題
扱うソフトが多岐に渡ってしまうという点で人材を選びます。グラフィック系のデザイナーはノートPCを持ち歩いてプレゼンすることもありますが、3DCADを扱えるPCは重量があるのが難点です。これによりフットワークが重くなってしまう可能性があります。
デバイス毎に色の出力が違うので、色の誤差に関してはクライアント側に理解を得る必要があります。
マーケティング(EC、広告含む)
メリット
すでにECで使われているところもあります。3DCADで撮影する場合、光の当たり方の設定、モデルのサイズ、撮影位置などを常に同じ条件に揃えることができるという点はメリットです。
1度作成したデータは、ライト設定を変えたり服の置き方を変えたりして使えますし、デジタルデータを広告用に転用するなど2次利用できるということも大きなメリットです。
課題
既存の方法とまぜて進めるとかえって効率が悪くなる可能性が高い。そのため、ある程度広い範囲の作業を入れ替えられるかどうかによって成果の印象はかわってくると考えています。
小さく初めてみてから大きく広げていく、というやりかたでは見えない結果が多いため正しい判断をしづらいという点は課題です。
マーケティングの数値(コンバージョン率など)はことなる会社間で共有されることはないため、知見や事例をさがして参考にする、という事が難しいという点も課題といえます。
まとめ
今回は分かりやすいように職種で分けてみました。
どんなデータを出力したいか、どういった人材が集まっているのかなどに依存する割合が大きいと思います。
段階的な導入をしたい場合は中長期的な目線も持っておくと良いと思います。
社内にまったく知見がないのであれば、アドバイザーを雇い入れることを検討しても良いでしょう。