CLO3DとMD(マーベラスデザイナー)は、同じ会社が開発している姉妹ソフトです。なぜ分かれているかというと設計上の違いがあるからです。
公式ではこのように回答されています。
少し説明がさっぱりしていますね。
もう少し詳しく2つのソフトを使ったことがある経験も踏まえて、感じた違いを書いていきます。
あまり作業に影響がない細かい部分は省略します。個人的に気になる部分の違いを書いていきたいと思います。
どちらのソフトを試してみるのか悩んでいる人は参考にしてみてください。
型紙データのインポート・エクスポート
DXFデータのインポート・エクスポートについて。
CLOは可能ですが、MDはできません。
つまりCLOではアパレル2DCADなどで作成した型紙を使えます。CLO内で修正・変更したデータをDXFとして出力して2DCADに戻すこともできます。
一方MDの場合、MD内で型紙を作成するか、過去に作ったデータをもとに修正しながら作っていく必要があります。
CLOで作成したデータはMDでも使うことができるため、CLOを経由すればMDでも型紙データを扱えます。
CLOもMDも、拡張子はZPRJで共通です。
CLOはアパレル業界向け、MDはCG・アニメーション向けだと言われるのは、型紙を読み込む・書き出す機能差のためです。
アパレル専門職以外の人は服の型紙を作成できないですし、正確な服の型紙を作る必要もありません。
レンダリング機能
CLOはレンダリング機能がありますが、MDにはありません。MDは画面スナップショットをとることはできます。
下の図がその違いです。スナップショット(左)とレンダリング(右)です。右の方が生地の質感や光の設定などを反映できているのが分かると思います。
MDは外部ソフトと連携をすることを前提として設計されているため、他のDCCツールとセットで使うのが一般的です。MDで外観のみ確認するのであれば問題ありませんが、生地の風合いなど画像出力したい場合は別途レンダリングソフトが必要です。
レンダリング出力をゴールに設定した場合、1つのソフトで完結できるのがCLO、他のソフトも必要なのはMDという違いがあるといえます。
値段の違い
ソフト利用料金はMDの方が安く設定されています。値段はアパレル3Dソフトの違いについて書いてあるので参照してください。
簡単に言えば、MDの方がCLOよりも安い利用料金設定です。
特に企業プランの料金の差は大きいため(詳しくは問い合わせしてください)、会社のリソース次第でどちらを選ぶのか、もしくは両方を平行して使っていくのか変わってくると思います。
基礎線
MDには基礎線がありません。CLOには基礎線・内部線を使い分けることが可能です。
基礎線とはパーツの内部にいれることができる線で外観に影響を与えません。案内線のようなものと思ってもらえれば大丈夫です。CLOの初期設定の場合、赤い線が内部線で青い線が基礎線です。
型紙の操作や作りが分かる場合は、バストラインやウエストラインなど目安になる線があったほうが分かりやすく整理もしやすいという利点があります。型紙の一部を切り広げた場合、位置を残しておけるという便利さがあります。服の型紙にたいする知識があるなら基礎線を使い分けることができるCLOの方が扱いやすいという違いがあります。
画面分割
CLOではメイン画面は2分割が基本で、それ以上画面を分割出来ません。
一方、MDでは最大4分割にできます(3分割も可能)
同時にさまざまな角度から、仕上がりを確認しつつ作業できます。外のDCCツールで画面分割に慣れている人には分かりやすいかもしれません。ただ、モニターが小さいと使いにくい機能でもあります。
基本的に2分割で問題ないので、この違いで大きな影響はでないはずです。
リトポロジー
MDにはリトポロジー機能がありますが(下図)CLOには無いという点が違います。
リトポロジーとはポリゴンメッシュの流れを綺麗に整えることです。この機能でメッシュ数を減らす(リダクション)操作もできます。これらのことはblenderやMAYAなどで行うこともできます。
CLOやMDで、ある程度綺麗に服を作ろうとするとポリゴン数が多くなります。そのままだと重くなりすぎてしまうため、ポリゴン数を減らす必要が出てきます。ただし、MDのこの機能だけでは完結できないことが多いため、外部ツールと連携するなど会社によって作業フローは様々なようです。
MDはゲームなど動かす用途に元になるデータを扱うことが多いがCLOは現状そうではないので、機能の付け分けがされているのではないかと思います。
スカルプト
MDにはシワと付けくわえるという機能がありますが、CLOにはありません。
一般的な3DCGでのスカルプトとは少しニュアンスが違います。公式の説明と動画はこちらのページを見てください。
CLOでもシミュレーションをかけながらパーツを動かすなどしてシワを自由にいれることは可能ですが、その分パーツの端なども自然に動きます。
シミュレーションをかけず、パーツの大きさを維持したままシワを追加できるのがMDです。
より細かく精度が高い凹凸を作り出したい場合は、ZBrushなどが使われていますので、この違いはどちらのソフトを使うかという判断材料から消しても良いかもしれません。
モーションループ
MDにはアニメーションのキーフレームを操作する機能があります。CLOにはありません。
公式が出しているYouTube動画を見るとイメージしやすいと思います。
アバターが同じモーションを繰り返したとしても布は物理計算によってランダムに動きます。CLOで4秒間の繰り返しアニメーション作ったとしてもループの最初と最後の位置をつなぎあわせたときに動きは滑らかに繋がりません。
少し難しい内容なので、MDだとループになっている服の動きを作りやすい。という理解でいいと思います。静止画だけ出力したい、静的な3Dデータのみ出来ればいいという場合には影響が少ない機能です。
CLOを使っていても、MAYAなどのソフトを使いループアニメーションに調整することは可能です。ただしCLOを使っていてループアニメーションを作ろうとするのは効率的とは言えません。
まとめ
最終的に何をアウトプットしたいか・他のツールをどれだけ揃えているか・扱うひとの関連スキルがどれだけ広いか次第でCLOとMDどちらを選ぶべきか変わりそうです。今回の内容であげた違いも参考にしてみてください。
企業によっては両方導入しているところもあるようです。拡張子が同じで2つのソフト間でデータ共有しやすいので、服の型紙を読み込むときのみフリーランスなどに依頼するという方法を検討しても良いと思います。
両方気になる場合は、2つのソフトそれぞれ体験版があるので実際に使って検証するのがオススメです。